Production Notes

クランクイン

 2017年1月14日、千葉県流山市。市役所で働く鳩子のシーンで映画『結婚』はクランクインした。安藤玉恵演じる鳩子が、婚姻届を出しに来たカップルたちの対応で次第に心が荒んでいくというシーンでは、安藤のユーモアを感じさせる演技に、モニターを真剣に見つめていた西谷監督の表情に笑顔が浮かぶ。初日ということもあり緊張感のある空気が流れていた撮影スタッフからも、安堵の表情が窺えた。
 市役所での撮影を終え、次の撮影場所であるレストランへ。移動中、突然雪が降り出すハプニングもあったが無事セッティングも完了し、いよいよ本作の主人公・古海健児を演じるディーン・フジオカの撮影がスタート。古海が初音(貫地谷しほり)にプロポーズするシーンとあって、監督、キャスト、スタッフの間で話し合いを持ちながら、意見を出し合い、順調に撮影が進められていく。
 更にこの日は、るり子(柊子)、麻美(中村映里子)、真奈(松本若菜)、鳩子が、泰江(萬田久子)から古海の隠された過去を知らされるクライマックスシーンの撮影が残されていた。女性たちそれぞれが抱える古海への想いが描かれる重要なシーンだけに、初日から気持ちの入れ方が難しいのではという不安もあったが、監督の演出にも熱が入り、萬田をはじめとした名女優達の競演が光る、シリアスで緊張感のあるシーンが出来上がった。

ディーン・フジオカが挑む新境地

 本作の主人公・古海は知性と洗練されたヴィジュアル、そして色気を持ち合わせた魅力的な人物。そんな完璧な人間を演じられるのは彼しかいない…という期待のもとディーン・フジオカがキャスティングされ、あらゆる女性を翻弄する結婚詐欺師役として、圧倒的な存在感を体現。本作で今までのイメージを覆す、俳優としての新たな境地をみせた。女たちを口説くシーンでは、ダンスやピアノ演奏といった難しい撮影が続いたが、思わず見惚れてしまう説得力のある仕上がりとなっている。
 撮影期間14日間というタイトなスケジュールの中、古海を演じるディーンは必然的に出演シーンが多く、日々ハードな撮影が続いたが無事撮了を迎えると、「短い撮影期間だったが、一つ一つのシーンがまるで象徴的な絵画の芸術作品に思えるような、そんなポエティックな世界観をみんなで作ってきた日々だった。古海は悪い奴とはいえど、役から離れるのは名残惜しい。とても感慨深い気持ちでいっぱいです。」と達成感たっぷりに語った。

監督・キャストの真剣勝負

「女性をただ騙される被害者としてではなく、古海といることで幸せを感じている瞬間をしっかりと描きたい」「普通の日本映画にはしたくない」西谷監督の強いこだわりのもと、女優陣のメイク・ファッションはあえて流行を追わず、時代を特定しないどこか外国の匂いも感じさせる独特の世界観を作り上げていった。一方、撮影現場では、よりよい芝居を引き出すために俳優の意見を取り入れる柔軟さで演出に望んでおり、るり子が真奈と対峙する喫茶店のシーンでは、「るり子は店に入るなり立ってまくし立てた方が、古海に恋する1人の女性としての精神状態に合っている」という柊子の提案を採用し、流れを変更する場面もあった。結果、1人の男を愛してしまった女同士のプライドと覚悟がより表現されたシーンとなった。

印象的なロケーション

 本作では、印象的なロケーションが数多く登場する。特に、撮影最終日に訪れた江川海岸は、日本の「ウユニ塩湖」とも呼ばれる名所であり、物語の核となる重要なシーンの撮影が行われた。
 砂浜での撮影は、夕方になると潮が満ちてしまうため、干潮の限られた時間の中で撮り切らなくてはならないという緊張感溢れる中行われたが、幸い天候にも恵まれ、青空が映える象徴的なシーンを撮影することが出来た。続いて場所を変え、今度は満潮時の夕暮れ時を狙ったもう1つの重要シーンの撮影へ。こちらの撮影も日が沈むまでの時間との戦いとなったが、古海の抱える闇と孤独を象徴した幻想的な映像に仕上がっている。

映画を彩る音楽

 本作は、ディーン演じる古海が夕日の沈む海を見つめ、「浜辺の歌」を口ずさむシーンから始まる。ディーンと西谷監督が作品についてのディスカッションを行う中で生まれた「古海と母親を繋ぐモチーフとして歌を取り入れてはどうか?」というアイディアから派生したこのシーンは、懐かしさや寂しさといった様々な感情を掻き立てる非常に印象的なオープニングとなっている。
 また、音楽を担当した谷口尚久は、西谷監督と本作が4度目のタッグとなり、抜群の信頼関係のもと、本作の持つ独自の世界観を彩る多くの楽曲を書き上げ、作品全体に深みを与えている。
 さらに、本作の主題歌はディーン自らが作詞作曲から担当。『結婚』という作品の世界観を主題歌にもしっかりと反映したいという強い思いを持って楽曲制作に取り組んだディーンは、タイトな撮影スケジュールの合間を縫ってはスタジオ入りし、楽曲の構想を深めていた。古海健児としての想いを込めたという歌詞にも注目してほしい。

予告編